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大場大のブログ "セカンドオピニオン"

がん治療専門医による、あくまでも個人的な「つぶやき」ブログ

BSフジの愚行とがん患者さんを食い物にするがんビジネスの横行 

昨日の10/30 (日) にとんでもない番組がBSフジで放映されました。

結論から申し上げると、あるトンデモ免疫療法グループの単なる宣伝 (プロモーション) に終始した番組でした。もしかしたら、このグループから宣伝費用を貰って制作されたのではないかと疑われてもおかしくないほどの偏った内容だったということです。

この番組スタッフたちは、いったいどれほど免疫療法についてしっかり勉強し、どのような取材力を発揮されたのでしょうか。この免疫療法グループに所属する人間に自由に語らせ、グループ提携クリニックのみに足を運びカメラを回しているだけ。

免疫チェックポイント阻害薬の登場も含めた、客観的ながん免疫療法全体の話や治療成績データは皆無。本当の患者なのかも不明な人物が、副作用が無いことを訴えるインタビューを繰り返すのみで、患者さんにとっての真の効果は何もみえてきません。局や制作サイドは一体どのような思考を巡らせて、このような番組を放映させたのでしょうか。

免疫療法の客観的な話については、下記のオピニオンサイトで説明していますので、よかったらご覧ください。

http://ironna.jp/article/4082

 

インターネット上で、「がん」「免疫療法」というワードで検索すると、所狭しと、免疫療法クリニックの広告サイトが登場してきます。なぜ、これほどまで多くの免疫療法を掲げるクリニックが乱立しているのでしょうか。このような特異な風景は、この日本だけだともいえます。

平たくいえば、「ラクをしてお金が儲かる」からでしょう。そして、法的規制が緩いために、医師の資格さえあれば、誰でも参入できるということもあります。したがって、そうしたクリニックで治療に携わる医師の素性には疑念がつきまといます。本当にがん治療を専門として真摯に患者さんと向き合ってきたプロフェッショナルな医師など、そのような現場にはほとんどいないはずです。

それを示すひとつの事柄として、患者さんの身にもし何か問題が起きたとしても、適切な対処はしてくれません。最初は優しく甘い言葉で温かく迎えてくれるものの、状態が悪化すれば、患者さんを投げ出すわけです。実際に、そのような目に遭った患者さんを多数みてきました。

薬事法の規制が働くのは、規制当局で承認された薬に対してのみです。そのため、未承認のクリニック免疫療法のように、効果が不確かなモノに高額な費用が発生したとしても、それ自体は法的に罰則を受けにくい状況にあります。また、患者さんが亡くなられている場合が多いため、裁判にもなりにくいのでしょう。

 

話は変わりますが、去る10/22に横浜で開催された、国内の会員数がもっとも多い日本癌治療学会の学術集会において「がん撲滅サミット2016」という市民公開講座も併せて催されました。一般の方たちにとって、リテラシーを育む絶好の機会であった「公開セカンドオピニオン」というセッションも企画されていたのですが、あるNPO法人の意向によって、5人の登壇医師のうちの2人が、エセ医療に携わっている者であることが判明しました。

それも同じ企業のトンデモ商品を扱っている提携クリニック代表者が2人も選ばれていたのは偶然でしょうか。さらにもう2人はビジネス色の強い粒子線治療推進の医師という非常に偏った人選だったわけですが、これら人選については、そのNPO法人顧問であるジャーナリストや弁護士が関わっていたというのです。

この企画に大きな疑念を抱いたがん治療専門医たちに率先して、卵巣がん体験者の会「スマイリー」代表の片木美穂氏が、即座に「市民公開講座に対しての見直し要望書」を日本癌治療学会理事長宛てに提出されました。

http://ovarysmiley.blogspot.jp/2016/10/54.html

これを受けてNPO法人が取った態度のひとつとして、プログラム内には朱色で目立つように、以下の文言が強調されたのです。

- ご注意-

本サミットでは暴言、誹謗中傷、妨害活動を行う場合は、ご参加されておられる他のお客様のご迷惑になりますので入場をお断りさせていただくか、ご退場をいただく場合がございます。

がん撲滅サミット - がん撲滅サミット2016 プログラム

公正な学術の場で、フェアさを欠いた不透明なイベント開催予定に疑義を呈したことが、 "暴言、誹謗中傷、妨害活動" に相当するとでも言いたかったのでしょうか。

しかしながら、結果的には片木氏が声を挙げたことが契機となり、がん治療専門医たちによる署名活動も相まって「公開セカンドオピニオン」開催は中止となりました。

http://www.jsco.or.jp/jpn/index/page/id/1274

片木氏の勇気ある行動と、北川雄光理事長 (慶應義塾大学一般・消化器外科学教授) の迅速かつ理性的な判断に敬意を称します。しかし一方で、一体なぜ突然沸いて出てきたNPO法人による働きかけを、当学会主催者 (群馬大学 腫瘍放射線学教授 中野隆史氏) 側が何のチェックもせずに受け入れてしまったのでしょうか。明るみにされていない様々な打算や利権構造が隠されているようにもみえますが、ひとつ各論的な問題として取り上げられた、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科学教授 勝俣範之氏の記事を紹介します。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161011-OYTET50035/?catname=column_katsumata-noriyuki

 

高いお金を支払って車を購入する際は、もちろんその車が走ることが前提となります。高額な食事代を支払うときも、料理が美味しいという対価としてお金を支払うはずです。では、クリニックで行われている高額な免疫療法は、本当にがんに効くのでしょうか。コストに見合うだけのリターンはあるのでしょうか。

少なくとも私は、本当にそれが効いたと思われる患者さんに出会ったことがありません。私の周囲にいる専門医師たちも、口を揃えて同じようなことを言います。

申し上げておきたいのは、そんなに立派な治療であれば、高額なお金を支払わなくても、とっくに保険診療として認められているはずです。もちろん、日本のみならず世界中の同様な患者さんたちにも迅速に届けられるべきでしょう。真に画期的な治療ならば、ノーベル医学賞の対象になってもよいわけです。

要するに、がんの治療薬と名乗る以上は、どこにあっても普遍的な意味をもたないといけないということです。冒頭で問題視した番組内にもみられた「独自の○○式」や「知り合いから紹介された」治療では、そうなり得ないということは、「何かが変だ」と、批判的に吟味する必要があります。

効果が何一つ確かめられていないモノに、時間も高額なコストも一方的に奪われてしまうのでは、決して賢明な選択だとはいえません。

しかしそうはいっても、すがれるものであれば何にでもすがりたいというのが患者さんの心理でしょう。いくら科学的根拠がなくても、批判的にみることが難しいというのが正直なところかもしれません。

 

だからこそ、多くのがん患者さんにとって影響力の大きいテレビメディアは、真にがんと共存できる社会づくり (がんサバイバーシップ) を目指して、少しでも本当に有益な啓蒙・教育につながるような、慎重な情報提供を心がけていただきたいと願います。そうでないと、メディアから発信される情報が、エビデンスレベルとしての信頼度が最低ランクに位置づけられている事実を、いつまでたっても払拭することは難しいということです。

大場先生、がん治療の本当の話を教えてください